ベン・ウィショー in 『Criminal Justice』(2008) 《Wカップ記念》

Criminal Justice


ワールドカップでイギリスは…日本もですね…盛り上がってるまっさなか。私は、残念ながら、あーんまりサッカーって興味ないのですが…週末に思いがけなくBBCで日本対オランダ戦が放送されているのを発見し、最後の6分観ただけなのだけど、さすがに思わず叫び声あげたり、興奮したっ(笑)。な、わけで24日の対デンマーク戦がちょっと楽しみだったりしてます♪

さて、ドラマ「Chriminal Justice」(2008年7月・BBCで5夜連続放送・アマゾンなどでDVD発売中)は、ベン扮するベン・クールター(Ben Coulter)が、イギリスの典型的青年…サッカー好き…ということを強調するためか、彼がゴールシュートを決めガッツポーズをするシーンで始まる。ある晩、彼は名前を交わさぬまま女の子と一夜を共にするが、真夜中彼が目覚めると、隣で寝ていた彼女は胸を刺されて死んでいた。その後のアクシデントもからみ、ベンは警察へ連行される。

そこからは、もうジェットローラーコースター並みのハラハラ展開。このドラマでベンを演じるベンは(ややこしっ…でもないか)、困る、怯える、泣く、動揺する、叫ぶ、絶望する…などのヘビーローテーションに加え、脱ぐ、脱がされるなどの展開もあり目が離せない(* ̄∇ ̄*)。

その上、Peter Moffatの脚本が秀逸。彼は元弁護士だったという経験を生かし、警察vs弁護団、弁護団vs容疑者、弁護団vs弁護団などといった、一般人では計り知れない、多分現実に基づいてるであろう悪質な内情を描きだしていく(このあたりについては、脚色がすぎたのか多数の弁護士からのクレームが相次いだとの情報もある。もしかしてリアルに描きすぎたのかも…。ベン自身は、この脚本を始めて読んだときに、あまりの面白さに夢中になって一気に読んでしまった…というコメントがどこかでありました)。

それぞれの立場、効率のみを優先させる駆け引きの中で、ベンが自分の無実を証明しようとしても誰も耳を傾けない。事件の究明や真実、人権などはどうでもよいことなのだ。その上ベンは、刑務所の中で服役者達が繰り広げる、看守もひきこんでの悪の帝国の構造の中に引きずり込まれ、心身ともに身動きがとれなくなっていく…。

ベン・ウィショーを主役に起用してくれてありがとう!と、思うほどベンはこのベン役にはまっているし、5夜連続ほとんど出ずっぱりでストーリーを引っ張っていく彼の演技は見事で、このドラマにより昨年の国際エミー最優秀男優賞を受賞したのもうなずける。そして、なんだかわかんないけどほっておけない吸引力を持つ彼の個性が、存分に生きていた気がする。どうみても無実そうな風貌の男なんだけど、彼が殺人を犯したと思わせる証拠ばかりが山積みで、母親からも『あなたもしかして…?』みたいな疑いを持たれ大絶望するベン。そう、容疑者や被害者を囲む家族…という観点にも踏み込まれていたけれど、ベンが誰よりも愛する母親から見放され、実刑判決が下ったあとの彼は、ドラマ冒頭の何の苦労も知らないような明るい青年から、自暴自棄な青年へとなっていき、観ていて息がつまりそうになった。でも、ここからの笑顔の全くないシラーッとしたベンも、また一段とステキだったりする v( ̄∇ ̄)。

また、このドラマでの青い透明感溢れる光の加減が美しく、ベンの怯える心や刑務所内の寒々しさを効果的に表現していたし、ベンを囲む脇役陣(Pete postlethwaite, Con O'Neill, Lindsay Duncanら)もドラマにさらなる重厚感を与えていた。このストーリーにあるような事件は現実に沢山あるだろうし、無実の罪に陥れられてる人も、現在世界中に数えきれないと思う。そういった不運な人々が、ある日突然思いがけず失っていくもの…というのも、このドラマではとてもよく描かれていると思った。普通の生活、いつも一緒にいると思ってた家族、信頼感、イノセンス、希望…。

最後に思わぬ展開で、幸いにも無実が証明され釈放されたベンが、冒頭のにぎやかなサッカー場を通りかかる。以前そこで、サッカーを楽しんでいた頃の無邪気な自分を思い出し、淋しげな笑顔を浮かべるベン。でも彼は、事件によって失ったもの以上のものを取り返すべく、立派にそれからの人生をやり直していくような気がする。人間って罪だ…腑に落ちないことが多いけど生きていかなきゃ…という余韻を残しながら終わるのがとてもいいと思った。




Comment

atsumiさん

私こそ、CJのことをおしゃべりしてくれる方に出会えて光栄です!イギリスのドラマって全般的にキレイなスターを主役において視聴率をとるというよりも、脚本と役者の演技力でグイグイひっぱるっていうのが多くて見ごたえあると思います。私はよくコメディを観るのですが、ツボにはまるの多いです~。

『Hunger』は、それこそ私が観る勇気を持ててない映画なんです。スチール写真だけでも凄そうな映画で、きっとガツーンと来る映画だというのは感じているのですが。心をきめてさっそくレンタル予約してみようかな?

こちらこそ興味深い書き込みをいただき大感謝です!どうぞ、これからもよろしくお願いいたしますね☆

No title

ずっと見る勇気が出ませんでしたが、見てよかった。こんなドラマ、中々出会えません。
CJが素晴らしさの一つは、『今これを見ている私たちも、明日同じ目に遭うかもしれない』と感じられることです。決して他人事ではありません。ベンと私たちは地続きなのです。
はーやさんが書かれているように、映像の美しさも際立っています。
冷え冷えとした空気が伝わってきます。突き刺さってくるのですよね。

はーやさんがいてくれて本当に嬉しいです。CJについてこうして話ができることを幸せに思います。どうもありがとう!これからもよろしくお願いします!

話は外れますが、はーやさんはHungerという映画をご覧になりましたか?おととしくらいの英国映画で、監督はスティーブ・マックイーン。IRAの闘士が刑務所でハンストを決行して死ぬまでの壮絶な映画なのですが、ぞっとするくらい美しい映画でした。見終わってしばらくショック状態から抜け出せず、ぼーっとしていました。クリミナル・ジャスティスはあのHungerに匹敵する作品だと思います。
最近見たイギリスのドラマでは、The Unlovedも不思議な美しさのある作品でした。あーやっぱりイギリス映画&ドラマはいいなあっ!と、余談ばかりでごめんなさい。

atsumiさん

atsumiさんのコメントを読んで、あのドラマの素晴らしさに、私も改めて興奮してきましたよ~。

あのベンの状況ってとんでもなくって、その中で自暴自棄になりながらも、彼は不思議と逞しく生き延びていくんですよね。考えてみると、死を選んでも本当におかしくない状態ですね。

このドラマの脚本はBAFTAでの脚本賞も受賞していて、イギリスではその年一番の注目のドラマだったようです。脇役陣も凄かった!ベンの母親役のオーブリィという女優さん、他のドラマでも見かけましたが、かなりの方だったのですね。知りませんでした。あと、グレアムをやってた役者さんも、今まで演じた役の中で一番エキサイティングだったと最近のインタビューで述べていました。

ベン・ウィショーならではの個性が存分に生かされていて、セリフを喋らなくても、こちらをグイグイと引っ張り込む表現力、彼の脚本選びの確かさも凄いな、と。どれをとっても超一流のドラマといえますね。

やっと見ることができました。

昨日半日かけて見続けていました。今日もずっと頭の中を離れなくて。久しぶりに凄いドラマを見ました、本当に凄い。まず脚本が素晴らしい、そしてベン。何なんでしょうね、彼の無尽蔵の表現力はどこからくるのでしょう。何度も涙がわいてきます、もういいよベン、もう頑張らなくてもって何回も言ってた。でも彼は死なない。並みの人間なら死を選んでいたと思う、でも彼は耐えた。ちょっとおちゃらけた普通の青年でしたよね、でも彼はものすごいタフな人間だった。本当だったら-チャンスがあれば-その強さを他の場面で発揮できたはずだった。
拙宅でだらだらと書いていたのですがきりがないのでひとまず休憩。
ベンの母役のジュリエット・オーブリィ、好きな役者です。母親役をやるようになったんだなあ、私も年とったからなあ、ははは。グレアムの人、悪役が合いますね。
英国では5夜連続放映だったのですね、それがふさわしいです!さすがBBC(予算減ってもがんばって〜)日本のCS局、LaLaTVはBBC枠を作るそうですがCJは放送してくれないだろうな〜こんな素晴らしい(つらく重たい)ドラマなのに。興奮さめやらぬまま、めちゃくちゃなコメントですみません。

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